研究内容

環境調和型資源開発技術

環境調和型石油天然ガス開発技術の開発

現在の石油の回収率は高々40~60%であり,まだ多くの石 油が既存油田に残されている。石油を資源として末永く使用 していくためには,地球温暖化にも配慮した環境調和型の石 油増進回収法(EOR)の開発が必要である。また,近年活発化 しているシェールガス,シェールオイル開発では,フラッキ ングに大量の水を使用することやフローバックする有害な水 処理が環境問題となっており,出来る限り使用する水の量を 削減することが必要である。 当研究室では,豊富な木質資源を原料とし,生分解性で環 境負荷が低いセルロースナノファイバー(CNF)を用いた石油 天然ガス開発技術の開発を行っている。一つは,CNF をナ ノ粒子化して石油貯留層の卓越流路に送り込むことで卓越流 路の浸透率を低下させ EOR 流体による油の掃攻効率を向上 させ,石油の回収率を上げる技術である。もう一つは,CNF を用いて安定な泡状炭酸ガスを生成し,それぞれ炭酸ガス EOR およびシェールガス,シェールオイル開発でのフラッ キング流体に用いることで,CCS/CCUS としての役割も持 たせながら,炭酸ガス EOR の掃攻効率を向上させるととも にフラッキングで使用する水の量を大幅に減らし,水環境へ の影響を低減する技術である。 下図に示すように,生産された石油・天然ガスの燃焼で排 出された炭酸ガスは植物に吸収され,新たなセルロースとし て再生され CNF が生産される。このように,本研究はカー ボンニュートラルな技術の開発でもある。

岩盤斜面健全性評価技術

発破振動を用いた岩盤斜面健全性評価技術

資源開発によって形成される大規模岩盤斜面の安定性を維 持することは,持続的な資源開発と環境および景観の保全の 観点から非常に重要である。現在,岩盤斜面の安定性は,主 に APS や GPS による斜面の表面変位モニタリングによっ て評価されている。当研究室では,これらの方法を補う安価 で手軽な方法として,現場で日常的に用いられている発破に よる岩盤斜面の振動を計測することで,その安定性に直接影 響する岩盤の力学特性の変化をモニタリングし,安定性を評 価する方法を検討している。

電磁的手法を用いた非破壊評価技術

金属材料に対する非破壊検査手法の開発

供用期間が数十年を経過した吊橋では,橋桁を懸吊するハ ンガーロープなどで腐食による経年劣化が問題となっている 事例がある。当研究室の前任教授により開発された全磁束法 と呼ぶ検査法は,国内外の吊橋のハンガーロープに対して10 年以上の検査実績を持っている。他にも,様々な金属材料に 対してその表面や内部に存在する欠陥を高精度で効率的に検 出評価する非破壊検査手法の開発も実施している。

図-1 CNF含有フォームによる石油天然ガス開発のカーボンニュートラル化

図-2 資源開発によって生じる大規模岩盤斜面(武甲山)