








現在、気候変動対策の切り札として、二酸化炭素の地下貯留(CCS)が世界中で計画されている。
しかし、従来のCCSはCO₂を単なる「廃棄物」として封じ込め、モニタリングすることに主眼が置かれてきた。これに対し、「地下にあるCO₂は、莫大な『資源性』を持つのではないか?」という新たな問いを提起するのが本シンポジウムの狙いである。
本会では、地下貯留CO₂を「資源性二酸化炭素」と定義。
「圧力エネルギー」の利用や、触媒・微生物を用いた「炭素源」としての物質変換に焦点を当て、資源工学・触媒化学・微生物化学という異分野のトップランナーが集結し、未踏の「資源化戦略」について議論を交わした。
資源工学分野からは、JOGMECの赤井崇嗣博士が登壇。現在進められているCCS事業の要素技術に加え、
経済的制約や政策課題について詳細な紹介があった。現状のCCSが抱える「コストの壁」の提示は、
なぜ今、資源化(有価値化)が必要なのかという議論の出発点となった。
触媒化学分野からは、早稲田大学の関根泰教授が講演。日本の政策立案にも携わる視点から、
資源に乏しい我が国が「技術」を輸出する戦略的意義を強調した。
貯留CO₂の資源化こそが、CO₂の隔離を「コスト」から「戦略的エネルギー供給」へと変える鍵となる技術で
あるという提言は、会場の視座を高めた。
微生物化学分野からは、横河電機の川野誠氏が、水素資化性メタン生成菌によるバイオメタネーションの事例
を紹介。我が国の温泉微生物群集が持つ安定的なメタン生成能力は、社会実装の可能性を参加者に印象付けた。
本研究会のメンバーからも最新の研究成果が発表された。高圧水素による地下への物質運搬や、
独自の触媒による変換プロセス、微生物の新奇代謝機構の解明といった具体的な「技術シーズ」の紹介は、
大学各分野での研究が着実に進展していることを示すものとなった。
シンポジウム参加者による活発な討議を経て、閉会挨拶では井口准教授(京都大学)が登壇。「触媒化学者に
とって炭素源として、『地下に莫大な規模のCO₂が貯留される』という事実は盲点であり、そこにポテンシャルを見出す視点は、この異分野交流によってはじめて得られた大きな気づきである」と締めくくった。
「コスト」から「戦略的エネルギー供給」へ。異なる学問領域が交差したことで、
「資源性二酸化炭素」というコンセプトはより具体的かつ多角的な広がりを見せ始めた。
本会は、産官学を横断したオールジャパン体制での技術確立に向けた、重要なキックオフとなった。
小林和弥(京都大学大学院工学研究科 社会基盤工学専攻、研究会代表)
井口翔之(京都大学大学院工学研究科 分子工学専攻)
浪花晋平(京都大学大学院工学研究科 分子工学専攻)
佐藤喬章(京都大学大学院工学研究科 合成・生物化学専攻)
道盛裕太(京都大学大学院工学研究科 合成・生物化学専攻)
本シンポジウムは京都大学「分野横断プラットフォーム構築事業」の支援を受けて開催されました。
支援に感謝申し上げます。